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主の御腕は力強い

テキスト

ダニエル3:1-30

3:17 もし、そうなれば、私たちが仕える神は、火の燃える炉から私たちを救い出すことができます。王よ、あなたの手からでも救い出します。

3:18 しかし、たとえそうでなくても、王よ、ご承知ください。私たちはあなたの神々には仕えず、あなたが建てた金の像を拝むこともしません。」

 

(1)バビロンの王ネブカドネツァル

①ダニエルと3人の知恵ある若者

今日お読みしたテキストにひとりの王様が登場します。それはネブカドネツァル王であります。彼はバビロン帝国を支配する偉大な王様でありました。

 

イスラエルの南の王国であるユダをも滅ぼして、ユダに住む民の多くを捕囚としてバビロンに連れてきました。その中にものすごく知恵と知識に富んだ若者たちがいたのです。

 

その名は、ダニエル、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴという4人の若者でした。彼らを調べてみると、どの国々の若者よりもものすごく秀でていたのです。なんと10倍優れていたと聖書は記しています。その知恵と知識は、人間の力というよりも神様から授かった神の霊による賜物でした。

 

②神様がネブカデネザル王に見せた特別な夢

ある時、このバビロンの王ネブカドネツァルが不思議な夢を見ました。彼はその夢を見た時、心が騒いだと聖書は記しています。そして、眠れなくなってしまいました。

 

私たちにもときどきそのような不思議な夢がやって来ます。いつもの夢のように、「ああ夢だったか」といってのんきに眠りにつくことができなかったのです。あまりにも鮮明で不思議な夢だったので国中から、呪法師、呪文師、呪術者などの夢を解き明かすことのできる人々を招集したのです。

 

ところが王様は、「こんな不思議な夢だから、きっと彼らにも何か示されるに違いない、夢の内容そのものから解き明かさせよう、そうでないといくらでも取り繕うことができてしまう。」と考えました。夢の内容を誰にも教えませんでした。国中から集められた呪術をする人たちは困ってしまいました。しかし王様は言いました。「この役立たずが。バビロン中の知者たちは一人残らず滅ぼしてしまえ。」

 

その命令は、なんとダニエルにまで及んだのです。ダニエルは言いました。「王様、天地創造の神様がきっと王様にこの不思議な夢をお与えになったに違いありません。私がこの夢の解き明かしをいたしますので、少し時間をください。」

 

しばらくして神様から特別な啓示をいただいたダニエルは、見事、王様の見た夢の内容とその夢の解釈を王様に告げて、王様のいらいらともやもやを解決することができました。

 

③夢の内容とその解き明かし

その夢を簡単に説明すると、これから起こる未来の帝国とその支配者に関することでした。王様は一つの像を見ていました。その像は、強烈な輝きを持っていました。恐ろしい姿をしていました。その像は、頭が金でした。腕と胸は銀でした。腹から腿にかけては青銅でした。すねは鉄でできていました。足は少し複雑でした。一部が鉄、一部が粘土だったのです。混ざり合っていました。すると、突然人手によらない大きな石が落ちて来て、この足を打ちました。すると、この像はすべて粉々に砕けて木っ端みじんになりました。そしてその石だけが残り、山となって全地に満ちました。王様にとって、こんな後味の悪い悲惨な夢だったのです。

 

ダニエルにその夢の解釈が示されました。4つの時代について表していました。金の頭はバビロンの王ネブカドネツァルでした。その後、バビロンよりも劣る国が支配するようになると伝えました。銀でできていたというのがそのことを示しています。それはメド・ペルシャのことでした。次に起こる国は、青銅です。これはギリシャを表しています。そしてそのあと、鉄の国ローマが起こります。鉄の特徴は強いということです。ダニエルが解き明かしたその夢の解釈は、後になって明らかになるのですが、その正しいことはまさしく歴史が証明しました。

 

④あなたの神は神々の中の神だ

ネブカドネツァル王は、ダニエルの夢の解き明かしを聞いて感動します。そして言いました。「この秘密を明らかにできたからには、あなたの神様は神々の中で一番すぐれた神だ。」そしてこのダニエルを高い地位につけました。知者たち学者たちを統率する、日本で言えば、文部科学大臣のようなポストに就いたのです。

 

(2)金の像を建たネブカドネツァル

①反キリストの象徴

このネブカドネツァル王は、ダニエルの神をほめたたえます。でも、神々の中の一つの神としてしかとらえていませんでした。ダニエルの神を天地創造された唯一の神であり、自分にとっても唯一の神であり、唯一礼拝すべきお方だとは捉えなかったのです。

 

その証拠に、このダニエルの夢の解き明かしに対して、まるで反抗するかのように、別の神の金の像を造らせました。バビロンで盛んに拝まれていた偶像でした。高さがなんと27メートル、幅が2.7メートルありました。当時の建築物の高さからすると、どこからでも見えたと思います。巨大な金の像でした。

 

この像が金でおおわれていたというのは意味があります。自分の見た夢では頭だけが金でした。バビロンは滅びてやがてほかの国が興って来るというものです。ネブカドネツァル王はそれを否定したかったのです。自分はこの世界を支配する王だ。そしてバビロンは決して滅びることなく永遠に続くのだ、というネブカドネツァル王の強い意志が込められていました。ですから全身金でおおったのです。ダニエルの夢の解き明かしを否定したかったのです。

 

自分の支配と権力をますます強固にしようとしました。そして命令したのです。

 

3:5 あなたがたが角笛、二管の笛、竪琴、三角琴、ハープ、風笛、および、もろもろの楽器の音を聞いたときは、ひれ伏して、ネブカドネツァル王が建てた金の像を拝め。

3:6 ひれ伏して拝まない者はだれでも、即刻、火の燃える炉に投げ込まれる。

 

とんでもないことが命令されたのです。バビロンに連れて来られた人々は、もともと別の神を信じている人たちです。その人々の霊的生活に影響力を与えようとしました。ユダヤ人にとっても恐怖の命令だったのです。

 

この像の高さと幅は原語では60キュビトと6キュビトとなっています。ネブカドネツァル王はこの6という数字にこだわっていることがわかります。6という数字は、人間を表しています。人間の力です。肉の力です。

 

聖書では「7」がよく登場します。黙示録では、7人の御使い、7つの教会、7つの燭台とか出てきます。この7は、「神の支配の完全さ」を表しています。

 

神様は6日間でこの世界をお造りになり、7日目は休まれたとあります。7は完成、完全を表しています。それから1だけ少ない数である「6」、それは不完全、未完成であり、人間の肉を表しています。そしてこれはサタンが好む数字です。

 

サタンがなぜサタンになったのかが、イザヤ書14章に記されています。今日は開きませんが、サタンは位の高い御使いだったのです。でも、あるとき、高慢になって言いました。「雲のいただきに上って、いと高き方のようになろう。」

 

でも神様から裁かれて悪魔サタンになってしまいます。そしてわれわれ人間の敵となって苦しめる存在なのです。彼は不完全、未完成な存在です。ですから6という数字を好むのです。

 

ネブカドネツァル王が60と6という数字を用いたというこは、サタンの象徴でもあります。この像を礼拝させるタイミングはいつだったのでしょうか。「6つの楽器が奏でる音楽が鳴った時」でした。角笛、二管の笛、竪琴、三角琴、ハープ、風笛という6つの楽器でした。6が3回も用いられているのです。「666」です。

 

②黙示録13章に示される反キリスト

この数字は黙示録にも登場します。聞いたことがあると思います。ヨハネの黙示録13:15-18をお読みします。

13:15 それから、その獣の像に息を吹き込んで、獣の像がものを言うことさえできるようにし、また、その像を拝まない者たちをみな殺すようにした。

13:16 また獣は、すべての者に、すなわち、小さい者にも大きい者にも、富んでいる者にも貧しい者にも、自由人にも奴隷にも、その右の手あるいは額に刻印を受けさせた。

13:17 また、その刻印を持っている者以外は、だれも物を売り買いできないようにした。刻印とは、あの獣の名、またはその名が表す数字である。

13:18 ここに、知恵が必要である。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。それは人間を表す数字であるから。その数字は六百六十六である。

 

ここで獣という者が登場します。黙示録のこの獣は偽預言者とも呼ばれています。彼は反キリストの像を強制的に拝ませます。そして拝まない者を殺したとあります。ネブカドネツァル王がしたことと酷似していますね。この獣の数字が666であることを聖書は記しています。ですから、ネブカドネツァル王は黙示録のこの獣、反キリストの予型であり、予表です。預言的な行動をしていることがわかります。

 

(3)偶像を拝むことを拒否した3人の信仰者

①たとえそうでなくても

天地創造の神を信じ、その神様に仕えて来たこのシャデラク、メシャク、アベデ・ネゴの3人はその命令に対してどうしたでしょうか。彼らはもちろん毅然と拒否したのです。偶像を拝むことに立ち向かったのです。それがたとえ王様の命令であっても、火の燃える炉の中に投げ込まれたとしても彼らは拒否しました。周りの人々は、いのちを救いたいと思って頭を垂れて、みなひれ伏したのです。

 

なぜ、この3人は拒否したのでしょうか。いのちはもっと大切ではないでしょうか。いいえ、彼らは生ける神様を見つめていたのです。生ける神を否定して偶像を拝むことは決してできない、そう考えました。

 

もう一度3:16-18をお読みします。

3:16 「ネブカドネツァル王よ、このことについて、私たちはお答えする必要はありません。

3:17 もし、そうなれば、私たちが仕える神は、火の燃える炉から私たちを救い出すことができます。王よ、あなたの手からでも救い出します。

3:18 しかし、たとえそうでなくても、王よ、ご承知ください。私たちはあなたの神々には仕えず、あなたが建てた金の像を拝むこともしません。」

 

彼らの神様に対する信仰は、際立っていました。形だけの信仰ではなく、誠実、忠実な信仰を持っていました。神様は私たちをこの燃える炉から救ってくださいますと告白したのです。「たとえそうでなくても」と続きます。たとえ命がとられたとしてもこの偶像を拝みませんとはっきりと告白したのです。

 

彼らは、この全宇宙、全世界を支配しておられる方が誰であるのかを知っていました。ですから、その方に命をゆだねたのです。この地上の命よりも、天の御国で神とともにいる命の尊さを良く知っていました。ですから、恐れるべきお方は神様ご自身であって、この地上の王様ではないと知っていたのです。

 

聖書は、このことを通して、私たちにとっても大きな教えを与えています。この地上で生きていくのに、私たちは従うべき命令がたくさんあります。法律を守らないといけません。日本には日本の国の法律があります。税金を納めなさいと言われたらちゃんと納めますね。

 

でも、このネブカドネツァル王のような命令が出されたらどうでしょうか。今は、「信教の自由」が憲法にちゃんと規定されています。偶像を拝むことを強制させることはできないわけです。でももし憲法が改正されたらどうなるでしょうか。やがてそういう時代が来ることを聖書は預言しています。患難時代のできごとです。このネブカドネツァル王のしたことは、この終わりの時代と共通するものがあるのです。

 

②7倍の熱さの燃える炉に投げ込まれた

ネブカドネツァル王は、かんかんに怒りました。怒りが爆発しました。「この王の命令が聞けないだと、そんな者たちは、滅ぼしてしまえ。いつもの7倍の熱さにして殺してしまえ」

 

ものすごい命令が出されました。なんと、彼らを縛って投げ込んだ役人たちが巻き添えで焼け死んでしまいました。それくらい燃え方が激しかったのです。

 

③何一つ害を受けなかった

投げ込まれたこの3人はいったいどうなったでしょうか。なんと、彼らは何一つ害を受けなかったのです。たとえ、何も燃えていなくても投げ込まれただけで全身骨折の大けがをするようなところです。

 

でも彼らは、無事でした。神様の完全な守りがありました。王様が次のように言っています。

 

3:24 そのとき、ネブカドネツァル王は驚いて急に立ち上がり、顧問たちに尋ねた。「われわれは三人の者を縛って火の中に投げ込んだのではなかったか。」彼らは王に答えた。「王様、そのとおりでございます。」

3:25 すると王は言った。「だが、私には、火の中を縄を解かれて歩いている四人の者が見える。しかも彼らは何の害も受けていない。第四の者の姿は神々の子のようだ。」

 

なんと、神の御子のように見える方が守ってくださったと王様が告白しているのです。

 

④たとえ迫害があったとしても

かつて日本でも多くのクリスチャンが迫害のために命を落としました。正式な記録だけでも4000人弱の人々が殉教しました。江戸初期のクリスチャン人口は20万人から30万人いたと言われています。江戸時代の激しい禁教令のゆえに、その1割は殉教したと考えられています。

 

彼らは、信仰を捨てるのではなく、命を捨てることを選びました。彼らは、生ける神様を見つめていたのです。その先にある永遠に続く世界に目を留めていました。神の国に目を留めていたのです。

 

今の日本では、自由にイエス様を信じることができます。今私たちは、本当に感謝な時代に生きているのです。でもこれから、生きている間に、激しい迫害の時代がやって来るかもしれません。たとえ、そのような時代になったとしても、私たちはきっぱりと偶像を拝まない、イエス様だけを礼拝すると宣言していこうではありませんか。この3人のことを覚えていましょう。