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へりくだることを学んだエリヤ

【テキスト】Ⅰ列王記17章12-14

17:12 彼女は答えた。「あなたの神、主は生きておられます。私には焼いたパンはありません。ただ、かめの中に一握りの粉と、壺の中にほんの少しの油があるだけです。ご覧のとおり、二、三本の薪を集め、帰って行って、私と息子のためにそれを調理し、それを食べて死のうとしているのです。」

17:13 エリヤは彼女に言った。「恐れてはいけません。行って、あなたが言ったようにしなさい。しかし、まず私のためにそれで小さなパン菓子を作り、私のところに持って来なさい。その後で、あなたとあなたの子どものために作りなさい。

17:14 イスラエルの神、主が、こう言われるからです。『主が地の上に雨を降らせる日まで、そのかめの粉は尽きず、その壺の油はなくならない。』」

 

 

これまでカラスに養われてきたエリヤですが、その住んでいたところの、ケリテ川も完全に涸れてしまいました。それほど、この干ばつがきびしかったということがわかります。

 

神様は、今度はエリヤにシドンに行けと命じます。シドンとはどんなところでしょうか。今いるケリテ川から歩いて150kmほどあります。歩いて1週間はかかります。しかも外国の地です。イスラエルの北にありました。

 

今の王様のお妃の出身地でもあります。イスラエルとはさかんに交流がなされていましたが、大きな問題もありました。偶像崇拝がさかんな場所でもありました。神様が飢饉を宣言するに至った原因はここにありました。このお妃の名前はイゼベルと言います。自分の国からバアルという偶像の神々を持ち込んだのです。このバアル礼拝が盛んにおこなわれていた場所、ここがシドンです。

 

「神様、なんでシドンなのですか。北の外国ですよ。異邦人ばかりです。そこはあなたのお嫌いになる偶像崇拝の地ではありませんか。」「わかっている。でもシドンに行きなさい。その土地であなたを養おう。」

 

「わたしはそこの一人のやもめに命じて、あなたを養うようにしている。」「えー。やもめですか。」「はい。わかりました。」エリヤは、神様の言われるとおりに従っていきました。なぜなら、これまでもカラスをとおして養われてきたからです。

 

人間ではなく、カラスです。何の約束もできない、ことばも通じないカラスに超自然的に養われてきました。その背後に神様の恵みと憐みによって生かされてきたということを毎日体験しました。ですから、神様の命令には素直に従うことができました。でも、やもめといっても金持ちのやもめに違いないと想像したと思います。自分一人くらい加わってもどうってことのない少し裕福な家庭に違いない、そう思いました。

 

やもめ、やもめ、やもめ、、、どこにいるだろうか。町の門に入ってみると、ちょうどその門の近くにやもめの格好をした人がいました。たきぎを拾っていました。

 

町の門の近くにたきぎが落ちているでしょうか。山の中ではないので、なかなか落ちていません。でもこのわずかしかないたきぎを拾っていたのです。エリヤにとっても大きな謎だったと思います。

 

丁度出会ったし、もしかすると神様が言われた方はこの方かもしれない。エリヤは声をかけてみました。「もしもし、水を一杯もらえませんか。」

 

「こんな見ず知らずの人に、貴重な飲み水を求めるなんて頭おかしいんじゃない?」

 

「でもこの人も今にも死にそうだわ。しょうがない。恵んであげましょう。どうせ私たちも長くはないわ。見たところ、預言者みたいな恰好をしているわね。何かいいことがあるかしら。少しだけ期待しました。よく見ると、遠いところを旅してきたようだ。今にも倒れそうだわ。」

 

実際、エリヤは何日も食べていなかったのです。ふらふらでした。この女の人は、あまりにもかわいそうに思って水を取りに家に向かいました。

 

エリヤは、すかさず声を掛けました。「ああ。もうひとつ。一口だけでいいので、パン菓子を持ってきてください。」

 

「ええっ!なんという図々しい人かしら。大切な水だけでなく、食べ物まで求めるとは。」

 

やもめの女の人が言いました。「パン菓子なんてあるわけないでしょう。うちには、最後の一握りの粉とわずかな油しか残ってないのです。この2,3本のたきぎで、最後のパンを作って小さい息子と二人で食べて死のうとしているのですよ。」

 

エリヤは驚きました。「ええっー! 神様、こんな極貧の家庭に私を養わせるのですか。」 神様は言われました。「そうだ。」

 

エリヤは、このやもめの人に言いました。「わかった。わかった。でも、まず、わたしのために一口のパン菓子を作ってきておくれ。神様がその粉も、その油も雨が降るまでは尽きることはないとおしゃっているから。」

 

エリヤが遣わされたところは、裕福なやもめの家庭ではありませんでした。王様がいる宮殿のようなところでもありませんでした。羊飼いのところでも、畑をたくさんもっている農家でもありませんでした。貧しい家で、しかも今にも死にそうになっている最も貧しいやもめの家でした。この家に身を寄せるということは、エリヤにとっては、大きな訓練、へりくだることの訓練でした。エリヤは神様への従順することによってへりくだりることを実践しました。

 

こんな貧しいやもめは誰も相手にしません。世間のうわさにもならないわけです。そこにエリヤがいたとしてもあまり目立ちません。エリヤは、目立たないように神様から守られていたわけです。

 

わたしたちがへりくだる上で一番重要なことは、何でしょうか。それは、神様に従順すること、聞き従うことです。どんなに、平身低頭で、頭を低くしていても、従うことをしなければこれは、本当のへりくだりとは言えません。

 

ただ謙遜すること、自分を卑下することや低く見せることがへりくだりではありませんね。相手に従順すること、これが一番のへりくだりであることを覚えていきましょう。