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口から出す言葉と信仰の関係①

マタイ920-21を通して、私たちの口から発する言葉がどれほど力あるのかを見ていきましょう。

9:20 すると見よ。十二年の間長血をわずらっている女の人が、イエスのうしろから近づいて、その衣の房に触れた。

9:21 「この方の衣に触れさえすれば、私は救われる」と心のうちで考えたからである。

 

この女性は、旧約聖書の基準から言うと、汚れた人でありました。長血という婦人特有の病気でした。こういう人は、人前に出てくることは許されませんでした。その人に触れた人も一緒に汚れてしまうと律法に書かれていました。

 

だから、この女性は、民衆から離れて隠れて過ごしていたのです。でもその病気は重くて、つらいものでした。それで、医者から医者へと渡り歩いたのです。どのお医者さんも彼女を治してあげることができませんでした。難病だったのです。

 

彼女は、お医者さんにすべての財産を使い果たして、もう生活費にも困るようになっていました。もう生きる望みも消えてしまいそうだったのです。そんなときに、イエスさまのことを聞いたのです。イエス様がやってきた。イエス様があの人の病気を治してくださった。盲人の目を開けてくださった。死人を生き返らせてくださった。悪霊が追い出された。たくさんの奇跡の話を聞きました。

 

すると、その女の人は、思いました。私もイエス様に会いに行こう。イエス様とお会いすれば私は癒される、その希望をもったのです。この女の人は、思いました。「こんなに大勢の人がイエス様に押し寄せている。この汚れた私がどうして近くに近づけるだろうか。」 でも、最後の望みであるイエス様をあきらめるわけにはいきません。

 

この人は、心の中で言いました。「イエス様の衣にちょっとでも触ることさえできれば、私は必ずいやされる」「大勢の前に出てイエス様に手を置いていただかなくても、触れることさえできれば」と思いました。

 

押し合いへし合いあいしながら、大勢の人々をかき分けて、なんとかイエス様のお着物と思いつつ、思い切って手を伸ばしました。イエス様に触ったのです。でも、なんと触れたところは、かろうじて足元に近い裾の部分でした。しかし、たちまちイエス様のいやしの力が流れていきました。その女の人は、完全に癒されました。自分でもその癒されたことがわかったのです。

 

イエス様は、この女の人の信仰をとても喜びました。「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです。」イエス様は、この女の人がどんな思いでここにやって来たのかを理解しました。そしてその信仰をほめたのです。

 

この女の人にとって、群衆の中に出ていくことは、リスクの大きなことでした。律法で裁かれてしまう可能性がありました。「汚れているのに、なぜ群衆の中に出て来たのか。」そして病気の体で、群衆をかき分けることもものすごい体力を必要としたのです。

 

彼女の行動を後押ししたのは、何でしょうか。それは、口の告白でした。「イエスさまに触れさえすればきっといやされる」何度も、何度も口で告白したのです。自分に言い聞かせました。この聖書の箇所の翻訳は、「心のうちで考えた」となっていますが、言語のギリシャ語では、レゴウという言葉が使われています。レゴウというのは、「言う」ということばです。心の中で言っていた。そして口で告白していたと想像することができます。

 

野球の試合で、直前まで調子の良かったピッチャーが、1本のホームランか、1本のヒットを打たれたことによって、突然調子が崩れてしまうことがよくあります。直前まで、次から次にバッターを簡単に打ち取っていたのにどうしたのでしょうか。心の平常心を失って自信を無くしてしまうと自分の力をうまく発揮することができなくなってしまいます。この後の最悪の事態が次から次に予測されてくるわけです。そうなると、この選手は、まともに力を発揮することができなくなってしまいます。

 

この不安を断ち切るには、何かの力が必要です。すると、監督が登場するわけです。あるいは、伝令が走っていきます。「おい。自分の力を信じろ。お前の力だったら十分やれるよ。大丈夫だ。心配するな。」と激励がなされるわけです。すると、この落ち込んでいたピッチャーも元気づけられ、勇気づけられて立ち直ることがあるわけです。

 

心の平常心とともに、大丈夫という自分を信じる力がどれだけ大切であるか、ということがわかります。

 

この長血の女は、自分の目の前にあるいくつかの障害を乗り越えるために、「イエス様に触れさえすれば、きっと私は癒される。」ずっとずっとこのことを口に告白して言い続けたと思います。そしてやっとの思いでイエス様に触れました。イエス様はこの信仰を大変喜ばれたのです。

  

このように、口の告白、口の言葉がどれだけ私たちの人生に大きな影響をもたらすのか心に留めていきましょう。